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​Chat.3

Day.5

Day.6

Day.7

Day.8

​Chat.4

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Chat.3

104 名無しさん 

最近、女神様のニュースぱったりだよな

 

105 名無しさん

女神様も忙しいんだよ

 

106 名無しさん

通り魔は増えてるっぽいけどね

 

107 名無しさん

最近暖かいからな

やべーのが出てくる季節だわ

 

108 名無しさん

冬眠ならぬ春眠しといてもろて

 

109 名無しさん

それにしても被害者からしてやっぱ女神様は活動停止中っぽいよなー

残念

 

110 名無しさん

女神様って何でこんなに情報出ないんだろ

 

111 名無しさん

>>110

尻尾掴ませないよね

 

112 名無しさん

殺人の為に生まれてきたみたいだな

 

113 名無しさん

神出鬼没だしまじで女神様の可能性

 

114 名無しさん

殺されないように真面目に生きるわ

 

115 名無しさん

>>114

俺も

 

116 名無しさん

通り魔の事何とかしてくれないかなー女神様

Day.5

 

ひと仕事ならぬ、ひと恩返しを終えたので〜…ワタクシ、この度拠点を変えました!えっちらおっちらと移動めっちゃ頑張りました!

 

始まる新生活、ですわー!

 

知らない所に来てまず最初に行うのは…勿論、お監視カメラの場所を把握して頭に叩き込む事!基本のきですわ!やむを得ない場合を除き、極力おカメラに記録されないように心掛けております!

 

幸いにも小柄ですのでね。死角に入るのはお手の物!神々廻サン程大きかったら苦労しそうですわ〜。

 

…ああ、愛しの神々廻サン。また会えますかしら。会えますわよね。ふふ。

 

 

 

――――さてさて。活動予定範囲内のおカメラはこれくらいかしら。ぼちぼちお食べ物を調達しなくては。

 

ほーんと、おカラスのせいでお財布無くなって気分最悪ですわー。スッカラカンの空っぽだったとはいえ、あるのとないのとでは気持ちの面で変わって参りますもの…。は〜あ、萎え萎えの萎えですわ〜。

 

こんな時、神々廻サンが居てくれたら気分も晴れますのに!

 

 

 

ワタクシは、おカメラの視線を掻い潜りながら歩きます。

 

前居た所もそうでしたが、此処も深夜徘徊の若者が多いみたいですわね。溶け込めるので助かりますわ。

 

そしてどうやら見た所によると、女の子達の割合が高いみたいです。グループみたいに固まっている子が大半…なのかしら。複数の方が安全ですもんね。

 

ワタクシは言うまでもなくおひとりサマですけれどー!おほほほー!

 

 

「ねーねー」

 

 

ふと、おエナジードリンクにおストローを刺して飲んでいた、ワタクシと同じくソロらしい​黒髪の女の子に声を掛けられました。

 

「きみー新しい子ー?」

 

「はい!新入りですわ!」

 

「そっかーよろしくねー」

 

「よろしくお願い致します!」

 

ペコーッ!と勢い良くお辞儀すると、女の子は超元気だねーと笑いました。お話するの楽しくて好きなので、ワタクシは会話を続けるべく訊ねます。

 

「アナタは此処、長いんですか?」

 

「んー…一ヶ月くらいかなー」

 

「そうなんですのね!」

 

おキャリーバッグに凭れながら、女の子は続けます。

 

「家、帰りたくなくなっちゃったんだー」

 

「あらま」

 

帰るお家があるのに帰れない…さぞかし苦労していらっしゃるのですわね。こんなにお若いのに…。

 

「…うちの親、毒親でさー。ぜーんぜん話通じないし、このままだとうちがおかしくなるーと思ってー。もういいやー出てこーみたいなー」

 

「ワタクシもそうでした!」

 

「じゃあ、仲間だねー」

 

二人で笑い合います。

 

「うち、友達居ないしー見かけたら話し掛けてくれるとうれしーなー」

 

あら?意外ですわね。気さくで良い子ですのに。

 

「分かりましたわ!」

 

「えへーありがとー。ここら辺ぶらぶらする事多いからさー。よろしくねー」

 

女の子は手をヒラヒラと振ります。ワタクシは、服からちらりと覗いたお手首に違和感を覚えました。

 

「それ、怪我ですか?」

 

すると女の子は気まずそうな表情で、隠す様にお袖をぐいっと引っ張ります。

 

「……あー、これはー……気にしないでー」

 

へらへらりと笑っていますが、先程の楽しそうな笑顔と違い、作り笑いだというのが分かります。もしかして…リスカなのかしら。

 

「良かったら、事情を話して下さりませんか?一人で抱え込むのは良くないですわ」

 

お姉サマも、それで随分追い詰められていましたもの。

 

ワタクシの申し出に、女の子は俯いてきゅっと唇を噛んでから、ぽつりと口を開きました。

 

「…駄目だって、分かってるんだけどねー。親への仕返しのつもりで…つい…やっちゃう事があって…」

 

「仕返し?」

 

「うん。うちの体って、親が作ったものでしょー。だからうちが傷付けば…少しは仕返しになるかなーって」

 

「でも…そんな事をしてもアナタの親御サンは…」

 

「…あはー。そうだよねー。ほんと、うち…馬鹿だよねー…」

 

女の子は、おストローにお口を当てました。とっくに中身が無くなっているのか、空気を吸う音が聴こえます。

 

「こんなだからさー周りの子も引いちゃってー。いつも一人なんだー。自業自得なんだけどさー」

 

おゴミ箱にお缶を捨てて、女の子は力無く笑います。

 

「なんかねー。たまーに…ほんと、たまーにだけど…うちってなんで産まれてきたんだろーって、思っちゃう」

 

「…分かりますわ」

 

「ほんとー?」

 

「めーーーーーっちゃ!!分かりますわ!!」

 

「うわーお」

 

ワタクシは女の子の手を取って、ブンブンと上下に振ります。すると次第に、面白そうに笑ってくれました。

 

「ふふふ、なんか、たのしーねー」

 

「そうでしょう!楽しいは作れるんですわ!」

 

「わー名言だー」

 

ぺちぺちと拍手してくれたので、ワタクシは熱弁します。

 

「お互い大変ですが、生きてたらまた会えます!会えたらこうやってお話が出来ます!お話が出来たら楽しくなります!」

 

「そだねー。うち、頑張って生きるー」

 

「その意気ですわ!」

 

「うんー。いっぱいお話しよー」

 

「是非是非!」

 

 

それから暫くキャッキャしたのですが…ワタクシはお食べ物探しへ、女の子はお洗濯しにおコインランドリーに行くという事で、自然と解散の流れになりました。

 

「またねー」

 

「はーい!」

 

手を振り合って、ワタクシ達は笑顔で再会の約束を交わします。ふふふ!お友達出来ちゃいましたわ!

 

 

お自販機の下からお小銭でも発掘しようかしらと歩きつつ考えていると…道端でたむろしている女の子達のぼやきが聞こえてきました。

 

「もーやだー死にたいー」

 

「あたしもー生きるのめんどいー」

 

「皆で一緒に死ぬー?」

 

「あははーそれいいねー」

 

…つい気を取られていたら、誰かにぶつかってしまいました!でも、転びはしませんでしたわ。だって…。

 

 

「神々廻サン!?」

 

 

が、受け止めてくれましたものーーーー!!!!LOVEズッキュン!!!!王子サマですわーーーー!!!!

 

「また会ったな」

 

「は、はいぃ…!!」

 

全身からおハートマークを迸らせるワタクシを見て、神々廻サンは、ふっと笑いました。はあ、はあ…神々廻サン成分が身に染みて…過呼吸になりそうですわ…。

 

「オレが電柱だったらケガしてたぞ」

 

「てへへ!気を付けますわ!」

 

もし神々廻サンがお電柱だったらワタクシしがみついて離れませんわ!おほほほ!

 

「…にしても偶然だな。この街に来てるとは思わなんだ」

 

「ワタクシ気ままな旅人の筈…つまり、神々廻サンに引き寄せられてしまったのかもしれませんわ!」

 

「磁石かよ」

 

「ワタクシ達、S極とN極の関係ですのね…」

 

「反発する方だと良かったのにな」

 

きゃっ!それってそれって、何気認めてくれてるって事ですわよね!素直じゃない所が愛おしい!すき!

 

「そうそう。此処ら辺、割と物騒な地域だから…一人で行動すんのやめといた方が身の為だぞ」

 

「あら、お詳しいのですね」

 

「昔住んでた」

 

「成程!?」

 

では神々廻サンの故郷!?いやーん!!ワタクシってばナイス判断!!

 

でも…危ないなら確かにやめといた方が良さそうですわね。違う場所を拠点にしようかしら。…とはいえせっかくあの女の子とお友達になれたのに…うーん…。

 

悩むワタクシに、神々廻サンがぼそりと言います。

 

「…オレ、暫くは此処に居る予定」

 

「奇遇ですわね!ワタクシもそのつもりでしたわ!」

 

「…」

 

「神々廻サン?」

 

「…別に」

 

え?え?どしたんですの?なんでちょっと拗ねてますの?

 

「一人で良いんなら、ほっとくけど」

 

あっ(察し)

 

「心配してくれてるんですか!?」

 

「それなりに」

 

「ワタクシの事好きなんですか!?」

 

「それなりに」

 

やったー!!それなりに好いて貰えてましたわー!!

 

「何で嬉しそうなん…」

 

「えー!?嬉しいに決まってますわよー!!」

 

ぴょんこぴょんこ飛び跳ねている最中、ワタクシはおポケットの中に三つの飴チャンを取っておいていたのを思い出します。

 

「そーだ!神々廻サン、これあげますわ!」

 

「どーも」

 

やったー!渡せましたわー!おミッションクリアー!

 

「この中だと、どの味が​お好きですか?」

 

おリンゴとおレモンとおブドウです!

 

「全部普通に好きだけど」

 

「へえ〜!」

 

「ニヤニヤすんなし」

 

また一つ、神々廻サンに詳しくなっちゃいましたわ!お脳内おメモメモ…。

 

「…で、どっちなん。一緒に来るんか来ないんか」

 

「一緒に行きまーす!!」

 

即答すると、やっぱりと言いたげな顔で神々廻サンはお鼻を鳴らします。

 

「あーあ。暫く賑やかになりそー」

 

イェイイェイイェイ!!!!賑やかしますわーーー!!!!ドンドンパフパフーーー!!!!エアおタンバリンシャンシャンシャンシャン!!!!

 

 

 

ワタクシが文無しだと薄々察していたらしい神々廻サンは、当分奢ると言って下さいました。神サマ仏サマ神々廻サマ。

 

そんな訳で今ワタクシは、おテイクアウトしたお牛丼をおベンチにて神々廻サンと並んで食べております。

 

ほあーーー美味ーーー…っぱお肉ですわお肉…人類はお肉を食べたら幸せになるよう設計された生き物なのですわ…そしておライスとの相性…おバッチグー…こんなん美味に決まってますわ…。

 

もう神々廻サンには是非是非お礼したい所なんですが、そんなん要らんの一点張りなのですわ。これではどうしようもありません。えーん!ワタクシの美学がー!

 

と・こ・ろ・で。

 

神々廻サンは意外にも少食らしく、最少サイズのお牛丼をちまちまと食べておられます。一口が小さいの、可愛いですわ〜!ちなみにワタクシはおキングサイズを食べてますわ~!

 

「街、もうぐるっと見たんか」

 

「あ、はい!」

 

「じゃ、案内は別に要らんな」

 

ぎゃー!!神々廻サンツアー参加したかったですわー!!なんで下見しちゃったんですのワタクシのアホー!!

 

「…この街、どう思った?」

 

「深夜徘徊する方が多い印象でしたわ!」

 

「だよな。……あそこに居る奴ら、オレあんま好きじゃない」

 

「そうなんですか」

 

まあ確かに…ワタクシのお友達はさておき…たむろしていた子達はちょっと…。

 

「軽いノリで死にたいって口にする奴ばっかりだし」

 

「分かりますわ〜」

 

そうそう、そこなんですのよ〜。例え冗談でも、聴いていて良い気持ちにはなりません。

 

神々廻サンは小さいお声で、ぽつりと言葉を零します。

 

 

「本気で死にたいけど死ねない人間の気持ちなんて、分かんねーんだろな」

 

 

ゎ、ゎぁ………物憂げなお顔もかっこいいですわ…これで17歳なんて詐欺ですわ…。

 

「…オマエ、なんかくだらねー事考えてるだろ」

 

「神々廻サンは今日もイケメンですわ〜」

 

「やっぱくだらんかった」

 

「くだらなくなくなくないですわ!」

 

「はいはい」

 

ふふふ!照れちゃって!んもーぅ!

 

 

は〜…神々廻サンと暫く一緒に居られるなんて、ワタクシ感激!

 

――――新生活、楽しくなりそうな予感が致しますわー!!

Day.6

 

神々廻サンは、ワタクシのお膝をお枕にしてグースカタイム中です。んひひひ…可愛い可愛い…。気に入って頂けたようで何よりですわー。ワタクシお肉全然付いてない、お骨皮人間ですのに!

 

光栄!!

 

…って、あら?あの子は!

 

おキャリーバッグを手にしたワタクシのお友達が、反対側の歩道を歩いているのを発見しましたわ!間違いナッシング!

 

「ごきげんよう〜!!」

 

両手をブンブン振ってアピールしたら、気付いてくれました!ちゃーんと横断歩道を使って、てててっと此方に近付いて来ます。

 

「わーまた会えたー」

 

「また会えましたわー!」

 

にこぱーと嬉しそうに笑ったお友達は、神々廻サンを見て目を丸くします。

 

「んー?この人だぁれー?」

 

「ワタクシのダーリンです!」

 

「ただの腐れ縁だろ」

 

「あらっ!起きてらしたのですか!?」

 

寝たフリだなんてイ・ケ・ズ!そ、それともワタクシのお膝枕を少しでも長く堪能しようとして…!?いやーん!24時間365日いつでも大歓迎ですのにー!!

 

むくりと​お体を起こした神々廻サンは、ワタクシとお友達を交互に見て言いました。

 

「どういう関係なん」

 

「フレンドです!」

 

「ねー友達ー」

 

「いつの間に…」

 

お友達と抱き合ってキャーキャーしてると、神々廻サンは段々遠い目になっていきました。渋いお顔も良きですわー!

 

 

――――さて。ワタクシはそういえばと、お友達に訊ねます。

 

「これから予定はあるのですか?」

 

するとお友達はゆっくーり首を横に振りました。

 

「んーんー。なーんにもないよー」

 

「でしたら!」

 

ワタクシ名案がありますわ!

 

「一緒に遊びましょう!」

 

暇な時はそれが最適だと思います!お友達は、ぺちぺちと拍手してくれました。

 

「いいねーさんせー。近くにゲーセンあるよー」

 

「やったー!では神々廻サン、ボディガードは任せましたわ!」

 

「調子良いなー…」

 

「よろしくお願いしまー」

 

「しまー!ですわー!」

 

お友達と二人でぺこりんしたら、神々廻サンはやれやれと溜息を吐きつつも頷いてくれました。

 

「…はいはい」

 

 

 

うわー!おゲーセン凄いですわー!賑やかですわー!うるっせーですわー!どれくらいうるっせーかと言いますと、おヘッドホンを付けている神々廻サンが眉を顰めるレベルですわー!お耳キーン!

 

「ねーねー、プリ撮ろー」

 

ワタクシの腕に自分の腕を絡ませているお友達が、楽しそうに声を掛けてきました。お返事は当然!

 

「良いですわよー!」

 

お写真撮るだけで云百円だなんてワタクシからしたら正気の沙汰じゃありませんが、だからこそ気になるというものですわー!

 

「やたー。うち払うねー」

 

「あら、良いんですか?」

 

「もちもちー。付き合ってくれるの嬉しいしー」

 

良い子ですわ〜…。

 

「バイトで貯めてたからー安心してー」

 

まじ良い子ですわ〜…。

 

ところで。

 

「神々廻サンは来ないんですか?」

 

「お二人でどーぞ」

 

何故か若干遠い所に立っている神々廻サンは、しっしと手を振りながらそう言いました。なんですのその絶妙な距離は!?心の距離の現れだったらワタクシギャン泣き致しますわよ!?

 

…ま、気を取り直しまして!

 

「いざ!」

 

「いざー」

 

ワタクシ達、おプリに突入!

 

 

 

はい、スライスチーズ!パシャパシャ!パシャパシャ!なんか楽しいですわねーこういうの!

 

撮り終えた後はお写真をおデコレーション出来るという事で、ワタクシはお友達と肩を寄せ合って画面をぽちぽちします。

 

…んぎゃー!?元々パッチリなワタクシのおめめが化け物級におビッグになってしまいましたわ!?えーと、取り消し取り消し…。

 

焦るワタクシの隣で鼻歌を歌いながら、お友達はおペンで文字を書いていました。ちらりと見てみたらそこには。

 

『ズッ友』

 

とありました。まあ…良い響き…おズッ友…。ふふふ。

 

 

 

ワタクシは、出てきたおプリの​おシートをお店備え付けのおハサミで半分に致しました。それからその片割れを手渡すと、お友達は瞳をキラキラ輝かせます。

 

「かあいーうれしー」

 

「ほんと、おキュートですわね!ワタクシ達!」

 

超可愛いですわー!お顔が良いですわー!ワタクシのごっついお隈もお加工で消せましたし、最強ですわー!

 

お友達は、それはもう嬉しそうにるんるんしながら口元を緩めています。

 

「うち、宝物にするねー」

 

「ワタクシもですわ!思い出の一枚ですわ!」

 

 

 

存分にキャピキャピ!イチャイチャ!してから、お椅子に座って腕を組んで目を瞑っていた神々廻サンに合流致します。

 

「お待たせ致しましたわ!ほらほら、見て下さい神々廻サン!すんごく可愛くないですか!?」

 

「ちょー盛れたー」

 

面倒臭そうにちらりと視線をおプリに送った神々廻サンでしたが…

 

「ほんとだ。かわいーじゃん」

 

と褒めて下さいました!やったー!

 

「実物はこんなだけど」

 

ちょおいおいおいおいおいおーーーーーい!?!?一言余計ですわよ!?!?

 

「おにーさん照れてるー」

 

「変な事言うなし」

 

「かあいー彼女、大事にしないとー」

 

「彼女じゃないって」

 

「えー?うちに取られちゃうよー?」

 

いたずらっ子みたいな笑みを浮かべて、お友達はワタクシに抱き着きます。すると神々廻サンは困った様に言いました。

 

 

「……それはやだ」

 

 

ワタクシは思わずお友達とお顔を見合わせます。ぱちくり。ぱちくり。

 

――――神々廻サン、今なんと?

 

お友達はワタクシへにこーっと笑顔を見せてから、神々廻さんに向き直りました。

 

「だったらーちゃんと幸せにしてねー。じゃないと、おこだよー」

 

人差し指を立てた両手をこめかみの辺りに添えたお友達は、ちらっと此方を見て、にーっと笑います。思わずひしっとしがみつくと、よしよーしと頭を撫でられました。えへぇ。くーんくーん。

 

良きおズッ友を持てて…ワタクシ…感激…。

 

 

 

その後、おUFOキャッチャーをしたり、お車のおレースゲームをしたり、おゾンビ達をぶっ殺したり、お太鼓を叩くゲームをしたり……ワタクシ達、超満喫致しました!!

 

柄の悪そうなお兄サン達もちらほら居ましたが、神々廻サンのおかげで安全に遊べましたわ!神々廻サンがちらっと見ただけで、そそくさと離れていくんですの。なんか爽快でしたわ。ワタクシではこうはいきませんもの。頼もしい〜!

 

 

おUFOキャッチャーの景品のおキーホルダーをおキャリーバッグに付けながら、お友達が嬉しそうに言います。

 

「こんなにたのしーの、すんごい久々ー」

 

「それは何よりですわ!ワタクシもとっても楽しいです!」

 

笑い合った後、お友達はぽんと手を打ちます。

 

「そいえば、まだ名前教えてなかったねー」

 

確かに!聞いてませんでしたわ!

 

「と言いつつー…うち、キラキラネームだからー…名乗るの恥ずかしくてー…」

 

キラキラネーム…何だか凄く身に覚えが…いえ、もう捨てた名前ですし!忘れましたわ!はい!忘却!滅却!

 

「無理しなくても良いですわよ、お気持ち分かりますもの。だから、これまで通りでもぜーんぜん良いですわ」

 

「ほんとー?」

 

「実はワタクシもですね、名乗れるお名前がないので!」

 

「ふふ、そかそかー。じゃあーこのままで仲良くしよー」

 

「ええ!」

 

いえーい!これぞ、意気投合!

 

 

 

その後、ワタクシ達はおハンバーガーなおファストフード店に行きました。

 

おファストというだけあって、注文してから秒で提供されましたわ!お牛丼とタメ張れますわね…やりおる…。

 

とまあそれはさておき、ワタクシが注文したのは…おチーズバーガー!の、おピクルスとおマスタード抜きですわー!あとおポテトの​Lサイズと、おズッ友オススメのおコーラですわー!

 

「ハンバーガーをコーラで流し込むとー最高の気分になるよー」

 

「成程!やってみます!」

 

もぐもぐもぐ!ごくごくごく!

 

「っぷっはぁーーーーーー!!堪んねぇですわあ!!」

 

「でしょー」

 

「一瞬おっさんが居たぞ」

 

おほほほ気のせいですわよおほほほ。

 

「しかもケチャップ顔に付いてるし」

 

「え?何処ですか?」

 

「此処」

 

神々廻サンが自分のお顔を指さして教えてくれた箇所を、ワタクシふきふき。

 

「逆」

 

逆をふきふき。

 

「取れてねえ」

 

あーーーーーーん!!どうしてですのーーーーーー!?

 

「おにーさん、拭いてあげたらー?」

 

お友達、にまにまにんまりこ。ワタクシ、うるうるうるりんこ。

 

「なんでオレが…ガキじゃあるまいし…」

 

「じゃあうちがやってあーげよー」

 

「えへへ!おズッ友は優しいですわー!」

 

二人で、ちらっ。

 

「…」

 

ちらちらっ。

 

「……」

 

ちらちらちらっ。

 

「一生続ける気だろ…分かったよもう…」

 

いえーい!!神々廻サン、折れてくれましたわー!!

 

「で、では!お願い致します!」

 

「何故瞼を閉じる」

 

「そーれ、ちゅーしろー、ちゅーしろー」

 

んもう!お友達ってばぁん!

 

ま、普通にお紙ナプキンで拭いてくれるんだろうな〜と思いながら待機していましたら。おテーブルがカタンと音を立てて。

 

「きゃー大胆ー」

 

え?え?え?何?何?何?

 

今の感触もしかして??????

 

ぺろ??????ほっぺ??????ぺろ??????ほっぺろ??????

 

瞼を開けると、むすーとしつつも頬を染めた神々廻サンがおりました。

 

「おにーさん、やるじゃーん」

 

「うっせー」

 

あばばばばばはばばばばワタクシ脳の処理が追い付かないですがとりあえずおハンバーガーをパックンチョします!!!!はい!!!!おケチャップ装着!!!!

 

「神々廻サン!!もう一回お願いします!!」

 

「二度とやらん」

 

そ、そ、そ、そんなぁーーーーーー!?!?!?

 

あ、ちなみに今回はお友達が拭いてくれましたわ。おほほ!

 

 

 

はてさて楽しかった時間もそろそろ幕引きです。お友達、この後用事があるらしいのです。えーん、残念!

 

月明かりに照らされたお友達は、ぐーんと伸びをして言いました。

 

「…うち、生きてて良かったー」

 

「まあ!」

 

「へへーズッ友のおかげー」

 

なーんて嬉しい事を言ってくれますの!全くもう!

 

「また遊びましょ!」

 

「うんー約束ー」

 

立てられたお友達の小指に、ワタクシも自分の小指を絡ませます。指切りげんまん!

 

「生きてたらまた会えるー、会えたらお話が出来るー、お話が出来たら楽しくなるー」

 

「あら、覚えてくれたのですか!」

 

「うんー。うち、この言葉すきー」

 

ぎゅーっと抱き合って、離れて、ワタクシ達は手を振り合いました。

 

「それでは、お気を付けて!」

 

「そっちもねー。まあー、ボディガードいるから大丈夫だと思うけどー」

 

にししとお友達が笑うと、神々廻サンはワタクシの頭に手を乗せて、ぐりんぐりんと撫でてきました。照れ隠し?それって、照れ隠しですかー!?可愛いですわ!

 

 

 

ワタクシは、お友達の背中が見えなくなるまで見送りました。

 

また一緒に遊べたらいいなと、思いながら。

Day.7

 

あれから一週間が経過しました。ワタクシは神々廻サンと一緒に、変わらず街で過ごしておりました。

 

神々廻サンは、満足したしそろそろ違う所行きたいって仰ってるんですが…それすなわちボディガードもうしないからそっちもこの街離れろって意味なのは理解しておりますが…ワタクシの我儘で待って貰っています。

 

だって、ワタクシには大切なお友達がおりますもの。この街を出ていくのなら、せめてお別れくらいは言いたいではないですか。

 

そんな訳で会えないかなーと思って此処に居るのですが…あの日以来、お友達の姿は何処にも見当たりません。

 

もしかして違う街に行ってしまったのかしら、と一瞬考えましたけど…有り得ませんわ。あの優しい子が黙って居なくなってしまうとは、とても思えないですもの。

 

 

という事で!

 

 

「お友達捜索隊、出発ですわー!!」

 

「最初からトばし過ぎたら後半で死ぬぞ」

 

「お出鼻を挫こうとしないで下さいまし!!」

 

「はーい、サーセン」

 

もー!反省してなーい!まあいいですわ!レッツラゴー!

 

 

 

とりあえず、お友達が行きそうな場所を探しましょう!

 

まずは…おコインランドリー!…居ませんわね。ハシゴしまくったけど見つけられませんでした。

 

次…おゲーセン!…居ませんわね。おプリの機械の中もちゃんと全部探しましたが見つけられませんでした。

 

最後…おハンバーガー屋さん!

 

 

「居ませんわーーーー!!!!」

 

 

「入れ違いの可能性もあるしなー」

 

えーん!人探しって難しい!おハンバーガー美味しい!もぐもぐ!えーん!

 

そんなこんなで休憩がてらのお食事中ですわ。​おケチャップを見るとあの時の事を思い出してときめいてしまいますわ。おほほ。

 

食べ終えたおハンバーガーの袋をくしゃっと丸めながら、神々廻サンはお口を開きます。

 

「にしても、アイツのチビ先輩への懐きっぷり考えたら、毎日会いに来てもおかしくねーのに…何で…」

 

「そう思います?えへへ」

 

「…オレ、結構真面目に話してる」

 

その言葉通り真剣そうな神々廻サンの様子に、ワタクシは緩んでいた顔を引き締めます。

 

「ここまで会えないのは流石に不自然過ぎる。何かあったと考えた方が良いかもしれん」

 

「な、何か…とは…」

 

「…」

 

「…」

 

「明るい内に、路地裏も見てみよう」

 

「はい…」

 

 

 

うひー、昼間でもやっぱり薄暗いですわ。流石は路地裏。こんな所にあの子が一人で来ますかね…?

 

「神々廻サン…考え過ぎなのでは…」

 

「だと良いけど」

 

神々廻サンは顎に手を添えて、うーんと唸ります。何やら考えているご様子。ワタクシはあまり…考えないでおきましょう。

 

失踪して一週間。物騒な街。この二つの要素だけで…もう…何だか…気が滅入りそうですわ。

 

 

 

路地裏巡りを終えて、拠点の街へ戻る道中。

 

「なあ」

 

「どうしましたの?」

 

神々廻サンが地面から何かを拾い上げました。

 

 

「これ、アイツのだよな」

 

 

…そう、おキーホルダーでした。

 

おUFOキャッチャーで取った、あの子がおキャリーバッグに付けていた、うさぎのおキーホルダー。

 

「どうしてこんな所に」

 

どうしてと口にはしたものの、ここまで来たら何があったのか考えなくても分かってしまいました。神々廻サンもそうみたいで、ワタクシにおキーホルダーを手渡した後、こう言います。

 

「…これ以上探すのはやめとこう。多分、オレらも危なくなる」

 

おキーホルダーをキュッと握り締め、ワタクシは頷きました。本当は頷きたくなかったけれど…今は頷くしかありませんでした。

 

 

 

人通りの多い、いつもの場所へ戻りました。ワタクシはおベンチに座り、おキーホルダーを見つめます。

 

――――意気消沈ですわ。まるで深い海の底に沈められた気分です。

 

ワタクシの隣に座っている神々廻サンも沈黙を続けていましたが、やがて口を開きました。

 

「警察に相談出来りゃ良いんだけど。オレ…訳あって、警察と関わるのは避けたくて」

 

「ワタクシも…お警察は…」

 

二人で暫し、黙り込みます。

 

「…悪い、何もしてやれん」

 

「いえ、そんな…神々廻サンは悪くないですわ。それに、今もワタクシに付き合ってくれています。だから謝らないで下さいまし」

 

神々廻サンは、ワタクシの肩を優しく抱き寄せてくれました。それからまた、静寂が訪れます。いいえ、辺りは騒がしいのですけれど…でも…そう思ったのです。

 

 

他の誰かが気付いて、代わりにお警察に言ってくれるまで、待つしかない……けれどあの子は家族と疎遠だし、ワタクシ以外にお友達が居ません。捜査が始まるまでに、どれだけの時間が掛かるのか。そもそも捜査なんて始まらない可能性もありますわ。

 

ワタクシに出来るのは、殺人だけ。

 

ですが犯人の詳細が掴めていないのに、行動を起こす訳にはいきません。更に今回に至っては、事前調査が容易ではなく、危険を伴うのが分かっています。相手は複数なのか、単独なのか…前者であれば、ワタクシに勝ち目はない。後者の場合でも、いつもの様に不意を突けなければ、体格差で返り討ちにされてしまいます。

 

――――ええ、そうです。悔しいけれど詰んでしまっている。でも、何か…何か方法がある筈。

 

ここまで考えて。ワタクシは、お礼の関わらない純粋な殺人を起こそうと考えている事に、気が付きました。

 

こんなのは初めての時以来です。

 

つまりワタクシは今。

猛烈に、怒っている。

 

 

ああ…全部思い過ごしだったなら。悪い夢だったなら良いのに。目が覚めたら笑顔のあの子が居て、おはよーまた会えたねーって言ってくれたら…どれだけ救われる事でしょう。

 

涙がじわじわ上がってきたかと思えば、次の瞬間にはぽたりと雫が落ちました。

 

「…なあ、チビ先輩」

 

鼻を啜って、ワタクシは答えます。

 

「どうしました?」

 

「すぐにでも、この街を出るべきだ」

 

…そう、ですわよね。正しい判断です。でも…ワタクシはどうしたいと思っている?

 

――――ええ。そうですわ。もう決まっておりますわ。

 

ワタクシは首を横に振りました。すると神々廻サンは、やれやれと肩を竦めます。

 

「まあ分かってたけど」

 

「ふふ、流石ですわね」

 

「…で、どうする気なん」

 

「どんな手を使ってでも犯人をぶっ殺します。でも…一人では出来ません。だからお願いがあります」

 

一呼吸置いて。神々廻サンの目を真っ直ぐ見て。ワタクシは伝えます。

 

 

「共犯者になって頂けませんか」

 

 

神々廻サンは、ワタクシから視線を逸らしませんでした。

 

 

 

あれから数日経ちまして。

 

ワタクシ…現在一人で路地裏付近を歩いております。自暴自棄になったとか、神々廻サンに見捨てられたとか、そういう訳ではありません。

 

作戦の一環です。

 

今回の相手は、受け身でなければ土俵に引きずり出す事が出来ません。だから現状一つだけ分かっている事実…若い女の子を狙うという要素を、利用する事にしたのです。

 

ズバリ、ワタクシが囮になって犯人の注意を引き付け…その隙に神々廻サンに不意を突いて貰って犯人の意識を奪い…拘束した後に事情聴取をし…返答によってぶっ殺すかを決める、という作戦ですわ。

 

正直これしか打つ手がありません。しかしそれすら、ワタクシ一人では取れない選択でした。神々廻サンが協力してくれるおかげです。感謝してもしきれませんわ。

 

ちらりと後ろを振り返ると、神々廻サンがついて来てくれているのが遠くに確認出来ました。…ふふ、何だか安心致しますわ。それに、誰かと協力して一つの目的を成し遂げようとするのは、初めてで…少しドキドキ致します。

 

全て終わったら、ワタクシの事…全部打ち明けたいですわ。それから、神々廻サンの事も教えて欲しいものです。殺人を犯そうとしているワタクシを止めなかった所か、協力してくれるのには…理由がある筈ですから。

 

 

…では、改めて気を引き締めましよう。

 

危険なのは百も承知。しかし恐ろしい出来事を踏み越えて生きてきたワタクシは、とうに恐怖のメーターがぶっ壊れています。つまり恐るるに足らず。

 

――――さあ食い付きなさい、ゲス野郎。地獄に叩き落として差し上げますわ。

 

後方からやって来た黒いおワゴン車が、ワタクシのお隣で急停車します。

 

「え」

 

いや、ちょ!?

 

複数の男がお車から出て来たかと思うと、瞬く間にワタクシお車に押し込まれました!!!!は!?!?何なんですのこの手際の良さ!!絶対常習犯ですわ!!手練ですわ!!

 

っていうか待って下さいまし!!これは想定外!!

 

連れ込まれる寸前、神々廻サンが、まじかー…って反応してるのが遠目からでも分かりました。ほんと、まじかー…ですわ。

 

…しかしこれはチャンスでもあります。狭い車内なら、背の小さいワタクシの方が動きやすい。地の利は此方にありますわ。

 

いっちょ乗り込んでやろうじゃないですの!!お覚悟ですわー!!

Day.8

 

「こんばんはー」

 

「危なかったね。誰かにつけられてたよ、君」

 

「可愛いねー大人しくしててねー」

 

車内の広い後部座席で、ワタクシは三人の男に囲まれていました。運転席に一人居るのは間違いないとして…どうやら助手席にも人が居るようです。つまり五人。これから連れて行かれる場所が何処かは存じませんが、着いた先で敵が増えるとしたら…よろしくない。決着をつけるなら、移動中の今しかありません。

 

手と足をお縄で縛られていますが、こんなものは仕込んでおいたおナイフでどうとでもなります。問題はタイミング。いつ行動に移すかが要ですわ。

 

一番手っ取り早いのは、おナイフで首を掻き切ってやる事…かしら。とりあえず後部座席の三人を殺れば、後の二人の処理もしやすいでしょう。

…まあ。

 

まずは何よりも、この人達があの子を殺した犯人かどうかを確かめる事が先ですが。口におテープが貼られていなければ、もっとスムーズにいけますのに。大変もどかしいですが、幸いにもお喋りな様子ですし…いずれボロを出す事でしょう。

 

ワタクシは脳内で何度も殺人おシミュレーションしながら、その時を待ちました。

 

「やっぱ穴場だわーあそこ。可愛い子多い上に家出してる子ばっかだし。ヤリたい放題ってこの事だよなー」

 

覆面の男達は、それはもう楽しそうに笑います。ワタクシはある言葉が引っ掛かって、一旦思考を中断致しました。

 

――――ヤリたい放題…ですって?

 

「この前の子すげー良かったよなー」

 

「あーあの黒髪の子」

 

「現金も結構持ってたし、かなり優良だったよな」

 

現金を持ち歩いている…黒髪の女の子…まさか。

 

い、いいえ。落ち着いて、ワタクシ。まだ早いですわ。それだけでは特定出来ません。大多数に当てはまりますもの。

 

「あの時撮った動画、めっちゃ良いオカズになってるわ」

 

「分かる〜」

 

ちらりと此方を見た男の一人が言いました。

 

「君も見てみるー?」

 

救いようのないお変態かつお馬鹿な人達。反吐が出ますわ。しかしこれはチャンス。被害者をこの目で確認出来ます。

 

ワタクシは頷きました。するとスマホを取り出した男は、画面を此方に見えるよう突き付けます。

 

再生された動画。

 

そこに…

 

 

そこに映って、いたのは。

 

 

「あーなんか見た事あると思ったら…君、この写真に写ってる子じゃない?」

 

そう言って男が見せて来たのは…ワタクシが​おズッ友と撮った、おプリでした。

 

「おいおい、お前持ってたのかよー捨てとけよー」

 

「可愛かったからさーついつい。思い出の品的な?」

 

「きめえ〜」

 

「ズッ友なんて素敵な関係だよねー可愛がってから同じ所に行かせてあげるよー楽しみにしててねー」

 

 

何言ってるんだ。こいつら。

 

 

――――返せよ。

 

ボクの友達、返せよ。

 

あんな目に遭わせて泣かせて動画まで撮って殺した挙句宝物まで奪ったなんて。考えうる最悪の結末を用意してくれやがった。

 

殺す。こいつら全員、絶対に殺す。

 

 

ごめん。ズッ友だったのに、助けてあげられなかった。

 

なんであの時、一人で行かせてしまったんだろう。

 

あの子は、どんな想いで死んでいったんだろう。

 

 

 

「あー。見てたらなんかムラムラしてきたー」

 

「お前!抜け駆けかよ!」

 

「本番前の味見って事で見逃してくれって」

 

そう言うと、男はボクのTシャツを捲った。パンツも剥ぎ取る。

 

馬鹿が。そこにあるのは…

 

「あらら。なんか可哀想な事になってんねー」

 

「マジ?あ、ほんとだー。前の方使えそうにないな」

 

「後ろでよくね」

 

「せやな」

 

狂ってやがる。

それはさておき、ボクの股間に三人共釘付け…今が絶好のチャンスだ。

 

――――有難うお母サマ。ボクをこんな体にしてくれて。

あー、あー、あー。クールダウン、クールダウン!ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ、ワタクシ…

 

…はい、ワタクシですわー!!

 

停止した黒いおワゴン車から、ワタクシ無事脱出致しました。暫くすると…神々廻サンの​お姿が!走って追いかけてくれていましたのねー!

 

「…元気そうだな」

 

「はい!無事ですわよー!」

 

おピースしてから、ワタクシは続けます。

 

「神々廻サン、最後の仕上げがございますの」

 

「証拠隠滅とか?」

 

「ザッツライトですわ!」

 

流石神々廻サン!お察しが良い〜!

 

 

 

お車の運転席に神々廻サン、そして助手席に座るワタクシ……何だかおドライブおデートみたいですわー!!

 

「オレ、無免許なんだけど」

 

「おフィジカルで乗り切りましょー!」

 

大きなおワゴン車を運転するには、ワタクシ足が届かなくて…足が届いたとしても今度は前が見えなくなってしまいますのよね。という事で、神々廻サンにお任せするしかないのですわ!

 

「簡単に言うなし」

 

「てへ!」

 

「一体オレに何個罪を重ねさせる気なんだ…このろくでもない先輩は…」

 

うんざりした様にぼやいてから、ワタクシの指示通り神々廻サンは車を発進させました。

 

「あとはもう、アクセルとおブレーキで何とかなりますので!」

 

「へいへい。意外と簡単なんだな」

 

「オートマですからね!おマニュアルでしたらガッチャンコガッチャンコしないといけなくなりますわ!」

 

「よく分からんけど助かったのだけは分かる」

 

「それと、お信号が赤になったらストップ!青になったら進んでもOKです!」

 

「流石にそれはガキでも知っとる」

 

 

 

ワタクシは犯人達のおスマホをお指紋認証でおロック解除して、お地図を開きました。お気に入り登録されているこの場所が恐らく、犯人達のお巣窟。

 

誰か居るのなら根絶やしにしてやるつもりですが、誰も居なくても行く価値はあります。証拠隠滅に便利なお道具があるかもしれません。何せ、沢山の人を殺して来た輩のおアジトなのですもの。

 

「あ、此処を左ですわー」

 

「うす」

 

「あらまあ!運転初めてにしては、おカーブ随分お上手ですわね!」

 

「…そーなん?」

 

「ええ!自信持って下さいませ!」

 

「これでも心臓バックバクなんだけど」

 

「ワタクシとおランデブーしてるからですか!?」

 

「犯罪の片棒担ぎながら無免許運転してるからだよ」

 

んもーう!つれないんだからー!

 

 

 

…あ!

 

「到着しましたわ!」

 

「おー」

 

ワタクシはお車からお地面へシュタッと降り立ちます。海の近くの物置小屋…成程、成程。証拠隠滅の手口が読めましたわ。

 

犯人のおポケットの中からおゲットしたお鍵でおドアを開けると、案の定。

 

「コンクリ詰めってやつか…」

 

神々廻サンが呟きます。

 

そう!まさに一式揃っていたのです。これはラッキーですわ。恐らくお車で好き放題して殺した後、此処に来ておコンクリ詰めにして海に沈めていたのでしょうね。証拠隠滅という意味でかなり有効な手段ですし。ま、自分達が沈められる日が来るとは夢にも思ってなかったでしょうけれど。

 

「さあ、これからちょっとお骨が折れますわよ!」

 

「骨粗鬆症で大変だろうけど、まあ頑張ってな」

 

「ちょちょちょちょ手伝って下さいましー!?」

 

ワタクシ一人で成人男性五人をおコンクリ詰めは無理無理の無理ですわー!!

 

「冗談だよ。ここまで来たらもうどうにでもなれって感じなんで。はい」

 

自暴自棄!自暴自棄ですわ!元々死んでいるおめめがますます死んでる気がしますわ!素敵!

 

 

 

――――さてさて。

 

ひと仕事終えて、ワタクシ達はおワゴン車で移動しております。行先は特にありませんが、とりあえず遠くを目指してますわー。

 

神々廻サンは運転がお上手ですし、無免許でも早々バレないだろうと思いまして。足にも宿にもなりうるお車は、使わないと損ですわ!

 

ちなみに後部座席には元々ブルーシートが敷かれていたので、おゴミ処理した時に血で汚れませんでしたわ。助かりました。一緒におコンクリに詰めたので、証拠隠滅もバッチリです。

 

…それから、物置小屋にはかなりの現金がありました。ですので資金は潤沢です。おガソリン代も当分は心配要りません。しっかり、大事に使おうと思います。きっと、無念を抱えて死んで行った子達のお金ですから。

 

 

「成り行きとはいえ…ここまで付き合わされるとは…」

 

信号待ちの間、神々廻サンがぽつりと呟きます。

 

「感謝感激ですわ!」

 

「離れられなくなったじゃん」

 

「うふふ…計画通り…」

 

「マジ?」

 

「いえいえ、流石に偶然ですわよ〜」

 

ほんとほんと。

 

「旅は道連れと言いますし!これからも仲良くやっていきましょ!」

 

ワタクシが笑顔で言うと、神々廻サンは、ふっと笑いました。

 

「旅は道連れ、世は情け…か」

良い言葉ですわよね。

――――アナタも、一緒に行きましょう。

​形見のおキーホルダーを手に、おプリに映るおズッ友を見つめながら、ワタクシは心の中でそう呟きました。

Chat.4

233 名無しさん 

通り魔のニュース、最近ないな

 

234 名無しさん

我らが女神様がやってくれたんだろ

 

235 名無しさん

警察より有能

 

236 名無しさん

天国の被害者達も喜んでるだろうな

 

237 名無しさん

被害者だけど超嬉しい

 

238 名無しさん

>>237

成仏してクレメンス

 

239 名無しさん

怖くて外出するの控えてたから助かる

 

240 名無しさん

女神様に感謝

 

241 名無しさん

足向けて寝れねえわ

 

242 名無しさん

>>241

何処にいるか分からんけど大丈夫そ?

 

243 名無しさん

逆立ちして寝るんだろ

 

244 名無しさん

>>243

流石に草

 

245 名無しさん

皆で逆立ちして寝るか

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